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» 2009年06月01日 00時00分 UPDATE

白熱電球を超える日は来るのか?:CFL/SSLの課題を探る (1/2)

省エネルギーやコスト削減への意識はますます高まっている。照明の分野も例外ではなく、これまで圧倒的なシェアを誇ってきた白熱電球に代わる、より照明効率の高い光源が注目を集めている。本稿では、代表的な代替光源である小型蛍光灯と高輝度発光ダイオードを用いた照明(SSL)に焦点を当て、それらが抱える課題や、その問題を改善するための技術開発について解説する。

[Margery Conner,EDN]

代替光源が抱える課題

 コストの削減やエネルギー消費量の低減といった理由から、一般消費者の間に、効率的な照明に対する需要が高まっている。もちろん、照明器具を提供する企業も新たな光源に注目しているし、国レベルでの動きも加速している。例えば、米国は2012年までに、EISA(Energy Independence and Security Act:エネルギー自給・安全保障法)of 2007が義務付ける効率基準の第1フェーズの導入を開始し、白熱電球の使用を段階的に廃止していくことを予定している*1)

 それでは、白熱電球に替わる代替光源には、どのようなものがあるのだろうか。短期的には、小型蛍光灯(CFL:Compact Fluorescent Light)が白熱電球に代わる最も一般的な照明となるだろう。そして、CFLには遠く及ばないものの、2番手となり得るものがハロゲン電球である。また、高い効率と堅牢性を得るためであれば価格が高くても構わないといった用途には、高輝度発光ダイオード(HB LED:High Brightness Light Emitting Diode)を用いた固体素子照明(SSL:Solid State Lighting)も使用され始めている。

 しかし、CFLとSSLは多くのデメリットも抱えている。CFLは、技術が成熟していなかったため、商業的に失敗に終わったという過去を持つ。また、使用する際には、寿命はもちろん、電球の向きなども考慮しなければならない。さらに、電球に水銀が使用されていることから、環境への影響と電球が破損した際の有害性を懸念する声もある。一方、SSLは熱管理の難しさや高すぎる価格といった問題を抱えている。それでも、新しい回路やチップ、熱管理のためのデバイス、そして製造方法の進歩により、これらのデメリットが改善される見通しが立ってきたことも事実である。

白熱電球の時代はまだ続く

 コストを重視する消費者は、光熱費を低減するために、従来の白熱電球からCFLへと移行し始めている。CFLは現在、住居向けに購入される電球のうち20%を占めており、EISAが照明効率の下限値に関する基準を定めたことにより、その数は増加し続けることが予想される。このEISAの規定については、2012年以降、白熱電球の販売が禁止されると誤解している人が多い。しかし、SSL向けの省電力化プログラムであるENERGY STARの照明プログラムマネジャを務めるAlex Baker氏は、「EISAは照明器具における効率の下限を定めているだけであって、白熱電球を全面的に禁止しているわけではない。EISAで定めた基準を満たす白熱電球が製造できるならば、白熱電球を引き続き販売することは可能だ」と説明する。

 より効率的な照明に向けた今後の段階的な計画について、Baker氏は、「EISAは、2012年には100Wの白熱電球の発光効率を約25%向上させることを求めてくるだろう。2013年には75W、2014年には60Wの白熱電球にもこの条件が適用される予定だ」と述べる。

 実は、これらの制約は、ネジ式の口金(エジソンベース)が使われた従来型の白熱電球のみに適用される。そして、現実には、EISAの規定によって販売が制限されない白熱電球も数多く存在する。米GE(General Electric)社の「Reveal」シリーズのような電球はその一例だ。「今後も長期にわたって多くの白熱電球が出回り続けるだろう」とBaker氏は述べる。

CFLの2つのアキレス腱

写真1 GE社の「EnergySmartCFL」 写真1 GE社の「EnergySmartCFL」 らせん状の管を白熱ガラス電球と似た形状に収めており、すっきりとした外観となっている。

 米国で2007年にEISAが制定された後、GE社はこの基準を満たすHEI(High Efficiency Incandescent)電球を開発すると宣言した。しかし、2008年11月、同社はHEI電球の開発を中止し、LEDと有機EL(OLED:Organic LED)の照明に専念すると発表した。これら2つは寿命や耐久性に優れ、蛍光灯など、エネルギー効率が高いほかの照明技術に勝る可能性を秘めているためだ*2)。GE社はLEDとOLEDに注力する一方で、CFLにも大きな将来性があると考えている。それを示すものが、同社が発売したCFLシリーズ「Energy Smart CFL」である(写真1)。

 CFLは、安価で入手しやすいという点において、圧倒的な優位性を持つ。しかし、一方でその使用に反対する人々も存在する。反対派の人々は、その反対理由によって2つに大別することができる。CFLに少量の水銀が含まれていることを懸念する人々と、その性能に不満を持つ人々である。

■水銀の問題

 水銀の問題は複雑だ。CFLには、加圧された水銀蒸気を満たした管が用いられている。CFL内部のバラストを使って、AC電源により水銀蒸気にアークを生成し、UV(紫外線)を放射して管の内側の蛍光体に当てる。そして、蛍光体は紫外線を“白い可視光”に変える。初期のCFLには、電球1個当たりに、10mgを超える比較的多量の水銀が用いられていた。管に水銀を封入する技術が未熟だったためである。ENERGY STARのBaker氏は、「水銀の封入作業は、薬用スポイトで液体を加える作業に似ている」と述べた。これは、量のコントロールが難しいということを意味する。そのため、メーカーは水銀を多めに封入していたのだ。また、紫外線を放射するには水銀は蒸気の状態でなければならないが、この水銀蒸気は時間がたつと、管の内側を覆っている蛍光粉末と結合する傾向があった。

 そこで、CFLメーカーは、ペレット状の水銀を管内に封入する方法を開発した。それにより、封入する水銀量をきめ細かく制御できるようにした。この結果、電球内に必要となる水銀の量が削減された。また、水銀と結合しにくい蛍光体皮膜も開発された。Baker氏によると、「(封入する)水銀の量の理論的な最小値は1.5mgであると主張するCFLメーカーもある」という。現在、ENERGY STARでは、CFLの水銀量を最大5mgまでと規定している。

 通常、管は加圧されているため、水銀は室温においても蒸気の状態にある。この状態だと電球が破損した際に非常に危険だが、その危険性を下げる技術も開発されている。照明メーカーであるドイツMEGAMAN社は、“液体の水銀を含まない”CFL製品群を販売している。その製品群では、水銀は100℃に達するまではアマルガム(水銀とほかの金属を組み合わせた合金)の中に含有されているため、水や土壌を汚染することはないという。

 どれだけの量の水銀が有害なのかということについて、明確な規定は存在しない。現在は、主にメチル水銀の有毒性について研究/調査が進んでいる。水銀は、水中あるいは最終的には魚などの体内において、メチル水銀となって蓄積する。発達過程にある胎児の中枢神経系は、特に水銀の影響を受けやすいため、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)と米国環境保護局(EPA:Environmental Protection Agency)は、妊娠している女性に対し、特定水域における一部の魚について、摂取量を制限するよう勧告している。しかし、その摂取量さえ議論の余地を残しているのである。魚を食べることは一般的に健康に良いと考えられているため、FDAは最近、妊婦の魚の摂取量に関する勧告を緩和した。これについては、水産業界からの圧力に屈しているとして批判の声を挙げる向きもある。このように意見の相違が生じるのは、メチル水銀、水銀元素/蒸気に関する明確な規定が存在しないためである。ENERGY STARのウェブサイトでは、水銀の有害性を懸念する人々のために、CFLが破損した際の処理方法に関する詳細なガイドラインが示されている*3)

 では、CFLは水銀を環境へと排出する有害な存在なのだろうか。実は、一概にそのように断ずることはできない。むしろ、水銀の排出量を低減できる可能性もある。米国を含む多くの国では、石炭火力発電でも電力を生成しているが、この石炭火力発電は水銀を大気中に放出する。例えば、白熱電球1個を寿命期間いっぱい点灯するために必要な電力を生成すると、10mgの水銀が放出される。それに対し、CFLを点灯した場合の水銀放出量は最大4mgである。カリフォルニア州をはじめとする一部の地域では、水力発電や天然ガスにより電力を得ているので、同州においては、CFLに切り替えても水銀の放出量は必ずしも減少するとは限らない。ただし、カリフォルニア州では電力の需要量が供給量を超えた場合、北米の電力網を介して石炭火力発電による電力をほかの州から得ることになっているため、こうした状況の下では、水銀の放出量を低減できる可能性が高いのである。

■性能(寿命)の問題

 CFLの使用で得られるメリットの1つに、その効率の高さからエネルギーコストを削減できることがある。CFLの寿命を1万時間、1時間当たりの電力費を13米セントとして計算すると、CFLを使用することにより、その寿命期間中に15米ドル〜60米ドル以上のコスト削減が図れることになる。ここで15米ドルというのは、寿命がわずか2000時間であると仮定した場合の値なので、実際に削減できる金額はこれよりも大きくなると考えてよいだろう。

 しかし、このような利点があるにもかかわらず、反対派が不満に感じているのは、CFLの実際の寿命が仕様に記された期間よりも短いことだ。ただし、CFLが仕様の値よりも早く寿命を迎える主な原因は、適切な状態で使用していないことである。

 例えば、電球が真上を向いたテーブルランプは、CFLの寿命が長くなる理想的な用途だと言える。ベース部分の電子部品が高温となる個所になく、また電球に覆いがないため過熱することがなく、さらには点灯時間が比較的長く、あまりオン/オフが繰り返されないからである。逆に、クローゼットの天井に設置された照明器具に使われるような用途では、CFLの寿命は短くなる。このような場所に設置された場合は、短い時間の点灯を何度も繰り返すことになるからだ。ENERGY STARは、CFLの寿命に対する不満に対処するために、ユーザーが用途に適した電球を検索できるようガイドラインを作成している*4)

 標準的なCFLは、家庭で使われる調光スイッチ制御式の照明には向いていない。通常、そうしたスイッチは、トライアックベースの調光回路を用いる。トライアックベースの壁付型の調光器は、白熱電球などの抵抗性負荷には適しているが、CFLなどの容量性負荷には適していない。汎用のCFLをトライアックベースの調光回路とともに使用すると、電球はすぐに切れてしまうか、寿命が著しく短くなる。多くの主要なCFLメーカーは現在、調光が可能な特殊なタイプのCFL電球を提供している。

 CFLの調光向けのICの例として、米International Rectifier社の蛍光灯用バラスト(安定)制御IC「DIM8」が挙げられる。CFL内部の調光コントローラとして使用するICであり、配線を追加したり変更したりすることなく、標準的な照明スイッチをオン/オフするだけで明るさを調整することができる。DORS(Dim on Random Switching)と呼ばれるこの方式は、数秒以内のオン/オフ操作で、100%の明るさから66%、33%、5%に調光することができる。100%の明るさに戻すには、照明を3秒以上消灯してから再び点灯すればよい。また、CFL調光制御回路はCFL電球のベース部分に収める必要があるため、実装面積の縮小が最大の課題となっている。それに対し、DIM8を使用すると、CFLの調光制御回路の部品点数を低減することができる。同ICの単価は1.09米ドル(1万個購入時)から。


脚注:

※1…Sissine, Fred, "Energy Independence and Security Act of 2007: A Summary of Major Provisions," Congressional Research Service, Dec 21, 2007

※2…Hamilton, Tyler, "GE suspends development of ‘high-efficiency incandescent,’" Clean Break, Nov 26, 2008

※3…Energy Star Frequently Asked Questions, energystar.custhelp.com/cgi-bin/energystar.cfg/php/enduser/std_adp.php?p_faqid=2655

※4…"Choose a Light Guide," Energy Star, www.drmediaserver.com/CFLGuide/index.html


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