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» 2010年02月01日 00時00分 UPDATE

6つのポイントから最適解を導き出す:「コンパレータ」の選択基準 (1/4)

コンパレータは、2つの電圧を比較して、どちらが高いかを判断するという、単純で基本的な処理を行う部品である。その一方で、理解しておくべき仕様が無数に存在するため、コンパレータを用いた回路の設計は容易だとは言えない。本稿では、まずオペアンプとの比較を通し、コンパレータの特徴について説明する。その上で、コンパレータを選択する際に検討すべき6つのポイントについて解説する。

[Paul Rako,EDN]

1ビットのA-Dコンバータ

 コンパレータは、2つの電圧を比較して、どちらが高いかを判断するという単純で基本的な処理を担う回路である。この処理では、2つのアナログ信号を入力とし、1つのバイナリ信号(ハイ/ロー)を出力する。このことから、コンパレータは1ビットのA-Dコンバータであると見なすこともできる。

 コンパレータの機能は、電子回路において、安定した基準電圧とある電圧とを比較するというケースで主に活用されている。そのアプリケーションとしては、レベル変換、レーダー、クロック復元回路、アンチロックブレーキシステムの車輪速センサー、降雨量測定器、携帯機器におけるヘッドホンジャック検出などが挙げられる。メーカーが提供するデータシートとアプリケーションノートを読むと、ほかにも数多くの用途が存在することがわかる*1)*2)*3)*4)

 しかし、その単純かつ基本的な機能の裏には、理解しておくべき無数の仕様が存在する*5)*6)。言い換えれば、すべてのアプリケーションに対応可能なコンパレータなど存在しない。米Linear Technology社で設計部門リーダーを務めるBrendan Whelan氏は、「コンパレータを利用する技術者の求める要件のうち、80%は数種類のコンパレータによって満たすことができる。一方、残りの20%については、そのすべてに異なる種類のコンパレータが必要になる」と述べている。

オペアンプとの相違

 コンパレータの選定と応用を複雑にしている要因の1つとして、「コンパレータは開ループ構成(負のフィードバックなし)で動作する単なるオペアンプである」と考える技術者が存在することが挙げられる。実際、オペアンプの基本原理は比較動作であり、一部の電圧比較の用途については、オペアンプをコンパレータとして使用することが可能である*7)*8)*9)。しかし、比較用途においては、それ専用のコンパレータにはオペアンプに勝る利点がいくつもある。例えば、コンパレータの処理速度は、汎用オペアンプをコンパレータとして使用する場合よりも一般的に高速である。また、コンパレータは、比較処理に使うための正確な内部基準電圧や、調整可能なヒステリシス抵抗、入力のクロックゲーティングなど、電圧比較以外の機能を搭載していることも多い。

 電圧比較の用途において、オペアンプよりもコンパレータを選択するほうがよい理由がもう1つある。それは、オペアンプの出力が線形動作の範囲内にあるのに対して、コンパレータは開ループモードで動作し、出力がハイまたはローの2値出力になることだ。また、オペアンプをコンパレータとして使用する場合には、まず2つの入力端子の部分で内部クランプがないことを確認しなければならない。内部クランプが存在すると、入力端子間の電圧差としてダイオードドロップ以上の値を許容しなくなってしまう。直列抵抗をオペアンプの入力部に配置することによって、この問題に対処することができるかもしれないが、その方法では入力のソースインピーダンスが高くなってしまう。

図1 飽和電圧からの回復時間(提供:Analog Devices社) 図1 飽和電圧からの回復時間(提供:Analog Devices社) 「AD8541」、「AD8515」、「AD8601」の各オペアンプは、いずれもコンパレータ「LM139」と比べて、飽和電圧から回復するまでの時間が長い。

 さらに、オペアンプは飽和電圧からの回復時間が長い(図1)。このため、比較動作を行っていない際の電流が用途によっては問題となる可能性がある。また、オペアンプのSPICEモデルの中には、飽和電圧の状態を正しく表してくれないものもある。シミュレーションを行う際には、この点にも注意しなければならない。

 オペアンプをコンパレータとして用いる場合には、ほかにも注意すべきことがある。オペアンプ製品には、1つのパッケージに4つのオペアンプを搭載しているクワッドタイプのものがある。そのうちいくつかをオペアンプとして使い、残ったオペアンプをコンパレータとして使うと、ひどい目に遭うだろう。4つのオペアンプのうち1つが電源レールの間を大きく振れる信号を出力することで、まず間違いなくほかの3つのオペアンプとの間に干渉/ノイズの問題を引き起こすからだ。

 オペアンプは比較動作を実現するものとしてではなく、コンパレータを利用する場合に便利なデバイスとして活用することができる。例えば、10μV〜200μVといった小さな電圧を比較したい場合には、オペアンプをコンパレータ用のプリアンプとして使用するとよい。その場合、オペアンプは入力信号を増幅する役割を果たす。それにより、コンパレータにとって、十分なオーバードライブ(定格スイッチングポイント以上の電圧マージン)が提供されるので、コンパレータを適切に動作させられる。Linear Technology社のスタッフサイエンティストであるJim Williams氏は、これまでにそのような回路をいくつか開発してきた*10)*11)。同氏によれば、コンパレータの前にオペアンプを配置しても問題なく比較機能を得ることができるし、その際には「プリアンプのゲインをできる限り大きくして動作させるとよい」という。

 2つのコンパレータを使用して、ウィンドウコンパレータを構成することもできる。ウィンドウコンパレータは、入力信号が2つのレベルの間にあるかどうかを判定するものである。リチウムイオン電池の充電器において、充電電圧が最適な電圧の範囲内にあることを確認するといった用途で使用される。また、コンパレータにフィードバックを加えて、フリーランニング(自走)発振器を構成することも可能である。

 このような特徴を持つコンパレータだが、その仕様/性能面での選択基準として、本稿では以下に挙げる6つをポイントとして取り上げる。

  • 出力方式
  • 消費電力/速度
  • ノイズ性能
  • 電源電圧
  • 入力バイアス電流
  • パッケージ

 以下、それぞれの項目について説明する。

POINT 1 : 出力方式

 コンパレータの動作は単純明快である。コンパレータは、正の入力端子と負の入力端子を備えており、正の入力端子の電圧のほうが高い場合には、コンパレータは負荷を駆動する信号を出力する。オープンコレクタ出力であれば、コンパレータの出力端子は、トランジスタのコレクタまたはFETのドレインである。トーテムポール型のプッシュプル出力の場合、オペアンプと同様に相補的なnpn/pnp段となる。

 オープンコレクタ出力は、負荷とコンパレータの電源電圧がそれぞれ異なる場合に有用である。例えば、コンパレータが3.3Vで動作する場合でも、そのコンパレータを使用する同じ回路内において、12Vで動作するソレノイドを負荷とすることが可能だ。ほかに、出力がオフの場合の静止電流を最小化するために、オープンコレクタ出力を利用することもできる。トーテムポール型の場合、2つの出力トランジスタのうちの1つには必ずベース電流が流れてしまうが、オープンコレクタ出力のnpn型出力トランジスタにはベース電流は流れないからだ。

 ただし、オープンコレクタ出力にはいくつかの欠点がある。まず、外付けのプルアップ抵抗が必要になることが挙げられる。コンパレータが高インピーダンス出力のときには、プルアップ抵抗が出力をハイにする役割を担う。すなわち、コンパレータ出力がオフになってからプルアップ抵抗によって出力がハイになる。この動作は、コンパレータの出力がローになる速度よりも遅い。つまり、オープンコレクタ型では、ハイ出力とロー出力の場合の速度が異なるので、クロック復元回路などのように対称型の波形が必要な用途には適していないのである。このような欠点があるため、出力のレベルシフトが不要ならば、米Advanced Linear Devices社の「ALD2321APC」のようなプッシュプル出力のコンパレータを選択するほうがよい。同製品は、出力電流が24mAで、静止電流は90μAである。

 高速コンパレータには、ラッチ出力が可能なものもある。出力信号のタイミングを制御することにより、信号を受け取る側(デジタル入力)のセットアップ−ホールド時間の条件を満たせるようになっている。

 また、高速コンパレータには、さまざまな電圧出力を備えているものがある。例えば、ECL(エミッタ結合論理)出力であれば、−5V〜0Vといった負の電圧範囲で出力を行う。一方、PECL(正エミッタ結合論理)出力であれば、正の領域である0V〜5Vで動作する。RSPECL(Reduced Swing PECL)出力を利用できる製品もある。1.2Vを中心に、+側と−側にそれぞれ300mVずれた2つの出力から成るLVDS(低電圧差動伝送)出力を持つ高速コンパレータも存在する。この場合、FPGAやほかのデジタル回路のLVDS入力端子に直接接続することが可能である。


脚注

※1…"Specifying Selected Op Amps and Comparators," Linear Brief 26, National Semiconductor, October 1973, http://www.national.com/ms/LB/LB-26.pdf

※2…LM139/LM239/LM339: A Quad of Independently Functioning Comparators," Application Note 74, National Semiconductor, January 1973, http://www.national.com/an/AN/AN-74.pdf

※3…"Applications of the LM392 Comparator Op Amp IC," Application Note 286, National Semiconductor, September 1981, http://www.national.com/an/AN/AN-286.pdf

※4…Williams, Jim, "A Seven-Nanosecond Comparator for Single Supply Operation," Application Note 72, Linear Technology, May 1998, http://cds.linear.com/docs/Application%20Note/an72f.pdf

※5…"Comparators," MT-083 Tutorial, Analog Devices Inc, 2009, http://www.analog.com/static/imported-files/tutorials/MT-083.pdf

※6…Mancini, Ron, "Designing with comparators," EDN, March 29, 2001, p.56, http://www.edn.com/article/CA69100

※7…"Using Op Amps As Comparators," MT-084 Tutorial, Analog Devices Inc, 2009, http://www.analog.com/static/imported-files/tutorials/MT-084.pdf

※8…Moghimi, Reza, "Amplifiers as Comparators?" Analog Dialogue, April 2003, http://www.analog.com/library/analogdialogue/archives/37-04/comparator.pdf

※9…"Microvolt Comparator" Linear Brief 32, National Semiconductor, June 1976, http://www.national.com/ms/LB/LB-32.pdf

※10…Williams, Jim, "Application Considerations and Circuits for a New Chopper- Stabilized Op Amp," Application Note 9, Linear Technology, http://cds.linear.com/docs/Application%20Note/an9.pdf

※11…Williams, Jim, "A Seven-Nanosecond Comparator for Single Supply Operation," Application Note 72, Figure 65, Linear Technology, May 1998, http://cds.linear.com/docs/Application%20Note/an72f.pdf


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