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» 2010年10月01日 00時00分 UPDATE

進化する組み込み向け計測技術 (1/4)

昨今の組み込みシステムは、最先端の技術を取り込み、より高機能/高性能なものとして実現されるようになった。その開発過程では、さまざまな信号を効率良く計測/評価する必要がある。では、計測装置のメーカーや計測向けソフトウエアのメーカーは、現在、組み込みシステムの開発/試験向けに、どのような製品を展開しているのだろうか。そして、組み込み向けの計測技術は、今後どのように発展していくのだろうか。

[Rick Nelson,EDN]

高まる計測技術の重要性

 自動車や航空機のような大型の機器から家電製品、さらにはモバイル機器まで、幅広い分野の製品が組み込みシステムとして実現されるようになった。このようなシステムの設計者は、プロセッサやマイクロコントローラ、ソフトウエアに関して多くの問題に直面している。その1つが、担当した製品が正常に動作することを示さなければならないということだ。不具合が起こった場合には、その原因を特定し、問題点を修正する必要がある。計測装置のメーカーは、こうした業務を支援するために、オシロスコープやロジックアナライザ、プロトコルアナライザなどさまざまな製品を供給している。

 2010年4月に米カリフォルニア州サンノゼで開催された組み込み業界のイベント『ESC(Embedded Systems Conference) Silicon Valley(以下、ESC)』では、多くの計測装置メーカーが組み込みシステム向けの製品を披露した。各メーカーは、組み込みシステムを設計する技術者を引き付けようと、オシロスコープやロジックアナライザ、プロトコルアナライザのほか、ソフトウエア製品なども含めて広範囲の製品を展示した。本稿では、このESCで行った取材と個別の取材の内容をからめて、組み込みシステムをターゲットとした計測装置のメーカーや計測関連のソフトウエアメーカーの最近の動向を紹介する。

計測装置メーカーの取り組み

 まず最初に、ESCにおける米Tektronix社と米LeCroy社の展示を中心に紹介する。

■Tektronix社

写真1Tektronix社の「MSO4000」 写真1 Tektronix社の「MSO4000」 MSO4000のようなミックスドシグナルオシロスコープは、組み込みシステムの評価/試験において重要なツールとなっている。

 Tektronix社はESCでミックスドシグナルオシロスコープ(ロジックアナライザ機能を備えるオシロスコープ)を展示するとともに、設計技術者がデバッグ時に信号のラント(Runt)やグリッチ(Glitch)を検出するのに要する時間の調査結果を発表した。同社が行ったこの調査によると、ユーザーはミックスドシグナルオシロスコープ「MSO4000」(写真1)など、Tektronix社のオシロスコープを使用した場合、競合他社の機種を使用した場合に比べて53%速く一般的なデバッグ作業を完了したという。

 Tektronix社でテクニカルマーケティングマネジャを務めるGina Maria Bonini氏は、「当社が独自に行った調査から、オシロスコープユーザーのうち、現在シリアルバスを扱っている人は60%、パラレルバスを扱っている人は50%という結果を得ている」とした上で、「ユーザーはデジタル回路のデバッグを重視している。そこで、当社のミックスドシグナルオシロスコープが、1万9000〜2万1000米ドルという価格帯の他社オシロスコープと比べて、どの程度ユーザーの作業効率を高めることができているのかを把握したかった」と付け加えた。

 このような理由から、Tektronix社は調査会社の米Hansa GCR社に依頼して調査を実施した。調査内容は、オシロスコープを使い慣れた47人のユーザーに直接話を聞いた上で、全員に同じ内容のデバッグ作業を行ってもらうというものである。Hansa GCR社で調査担当シニアコンサルタントを務めるAndrea Eaker氏は、「今回の調査によって、Tektronix社のオシロスコープを使用した場合、他社のオシロスコープに比べて半分の時間で信号内のラントやグリッチを検出可能であることが確認できた。また、今回の作業の中では、自動検索機能とトリガー設定機能が特に役立つことがわかった。総合的に、Tektronix社は満足度について高い評価を受けた」と報告した。

 今回の調査において、参加者には、オシロスコープを設定してグリッチとラントを観測すること、トリガーを設定してラントを取り込むこと、波形を検索してすべてのラントを見つけ出すことの3つの作業を要求した。Bonini氏によると、「これら3つの作業を速やかに行うことができれば、タイミングエラーやバス競合の問題、メタスタビリティ、セットアップ−ホールド違反、終端など、物理レイヤーに関連するシグナルインテグリティの問題について、迅速かつかなり正確に把握することができる」という。

 Bonini氏は、今回の調査においてTektronix社のオシロスコープが高い評価を受けたのは、1秒間に5万波形を取り込むことが可能なデジタルフォスファ技術によるものと考えている。同氏は、「デジタルフォスファ技術によって波形を繰り返し重ね書きし、アナログオシロスコープの感覚を再現しようとした。そうすれば、ユーザーが信号の中の異常を見つけ出すことが容易になるからだ」と述べた。

 このほかMSO4000は、長時間の記録が可能なオシロスコープで有効に利用できる自動検索機能を備えている。MSO4000の場合、レコード長は10メガポイントで、1万画面分のデータを取得できる。MSO4000を使用すれば、ラントトリガーを設定した状態で、オシロスコープを一晩中、あるいは週末の間ずっと動作させて信号の監視を行うといったことが可能なので、メタスタビリティなどの問題を検出することができる。

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