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» 2006年05月01日 00時00分 公開

高速オシロスコープを使いこなす (1/4)

最近のデジタルオシロスコープは、かなり高精度な測定や解析が可能である。しかし、このような高度な機能をうまく使いこなすには、入念に準備しなければならない。

[Dan Strassberg,EDN]

 オシロスコープ(以下、オシロ)は電子回路やシステムの内部動作を観測できる。基本的には見ることのできないプロセスを見るツールがあること自体、電子技術者は細かすぎる、という人がいる。確かに、他の分野にはこれほど細部を観測するツールは存在しない。オシロはすでにユーザーが求める性能以上に高精度だが、メーカーはさらにその価値を高める工夫を続けている。「高速」(帯域幅およびサンプリングレートの双方)、「大容量」(データを取り込むメモリーの容量)および「低価格」は今でもオシロ設計者の目標である。これに加え、オシロをさらに便利にするための工夫が著しい。その勢いは、帯域幅、サンプリングレート、メモリー容量の増加に劣らぬほどだ。

 ここ数年間、オシロの解析および計算能力の向上は著しい。しかし、解析能力を加えることは、大量の計算を行うオシロの設計課題の一部にすぎない。また一方で、高度な新しい機能を付加したところで、ユーザーは驚きもしないと思われていた。おそらくオシロは、ユーザーが使うのをためらうほど複雑な操作を必要とする機能は備えない方がよいのだろう。オシロの設計者は、新製品が登場すると、その操作性に関する話題全体を、自動車にたとえて、「オシロの運転方法」といった見出しで紹介したりする。

 オシロは、電子技術者の仕事の中でとても重要な部分を占めているが、それでもオシロを単なるツールとしてしか認識していないエンジニアは多い。つまり、作業を行うための付随物であり作業の対象ではない。そのような認識に応えて、使用方法はさらに容易になり、またそれが、オシロはただのツールだという認識を大きくする。技術について考えることなく測定ができれば、その処理手順については何も考える必要がないように感じる。スケジュールや予算が縮小されている今の時代には、作業以外の問題について考える時間はほとんどない。そのようなことを考えることは危険なことである(別掲記事「オシロの高周波振幅精度の正確な校正は、思ったよりも難しい」を参照)。現在のオシロは、本質的に困難だと思われていた測定が容易にできるようになったが、その測定は見た目よりも複雑になってきた。この事実を認識し、オシロやその技術を理解していないと、意味のない誤った測定結果になる。また、最悪の事態になって修正するにはコストがかかりすぎて、不可能な状態になるまで結果が無効であることに気づかない可能性もある。

直感的でなじみやすさを優先

 アプリケーションに最適なオシロを選択し、それを最善の方法で使用できるほどの専門家になるには、努力が必要だ。実際、最適なオシロを見つけ出し、それを最も効果的に使用するための努力を無駄足だと言う人もいる。第一に、オシロの選択や使用に関して、何が「最適」で、「最善」であるかという定義は、エンジニアによってそれぞれ異なる。次に、オシロを選択する際にエンジニアが参照するデータシートは、量が膨大で、脚注や細目がぎっしりつまっており30ページ以上もある場合がある。3つめに、市場におけるミッドレンジのオシロの多くと、ハイエンドのオシロのほとんどすべてが、今やパソコンベース、つまり通常はWin-dowsの標準バージョンに基づいている。したがって、Windowsベースのソフトウエア・アプリケーションにより、オシロの多様な機能にアクセスする方法が決まっている。

 オシロのアプリケーションの複雑さは、少なくともマイクロソフト(www.microsoft.com)のWordやExcelといった、パッケージ化されたオフィスソフトウエア・アプリケーションに匹敵する。オフィスアプリケーションのユーザーの多くは、そのソフトウエアの機能のなかでほんの一部しか利用していない。オシロユーザーも同様である。さらに、多くのオシロユーザーに共通する問題は、オシロを毎日使用するわけではないのに、その前に座ったら直ちに被測定物のシステムやデバイスに関する測定結果を得たいと思う点だ。つまり、オシロの機能を使うための方法は、直観的で、ユーザーがよく知っている従来の慣習にできる限り従ったものでなければならない。

 オシロメーカーは、少なくともハイエンドのオシロを、正しく選択したり有効に利用する上で最も大切なことは、オシロを販売するフィールド・エンジニアであると指摘している。彼らは、購入前に他の機器と細かく比較する手助けと、オシロを有効に利用するためのアドバイスや周辺機器を提供してくれる。販売代理店のセールスマンも同じようなサービスを提供してくれるだろう。また、販売代理店で購入てもメーカーと購入したモデルによっては、工場がサポートを提供している場合もある。多くのオシロベンダーが、自社製品を有効に利用するための情報を記載したアプリケーションノートを、ウェブサイトに準備している。表 1(http://www.edn.com/contents/images/6305348t1.pdf)および 表2(http://www.edn.com/contents/images/6305348t2.pdf)に、主要4社のリアルタイム・サンプリングオシロの主な仕様をまとめた。

オシロの高周波振幅精度の正確な校正は、思ったよりも難しい

Steve Sekel 米LeCroy社

 オシロの振幅精度に関して、ユーザーから質問や苦情を受けることがよくある。ユーザーは、信号発生器からの掃引正弦波の精度を測定しようとする。ユーザーはこのような作業を自分で行ってはならない。その測定には何も問題がないように思われるが、周波数が数GHz以上の場合、その結果は必ずといってよいほど誤っている。

 最初の問題は、発生器の出力レベルをケーブルの出力端に合わせなければならない点である。ケーブルが、1000米ドル以上もする最高級品であっても、数GHzの範囲に達すると振幅損失が生じる。信号発生器を用いて振幅精度を測定する唯一の方法は、オシロに接続するケーブルの端に、高品質で校正された電力分配器を使用することである。

 電力分配器の出力の1つは、測定している周波数範囲と電力レベルに校正されたRFパワーメーターのパワーヘッドに直接接続する。すべてのV/目盛りの範囲で測定を行う場合は、複数のパワーヘッドが必要となることが多い。パワーメーターの測定値は、各周波数ステップの出力レベルを正規化したものである。自動校正システムでは、この処理はコンピュータ制御により実行される。この処理を手動で行うのは、可能ではあるが面倒な作業である。

■反射

 第二の問題は、オシロ入力の反射に関するものである。これも多くの場合に間違いなく生じるが、実際にユーザーは、重なった反射信号を測定することになる。オシロ入力は完全な50Ω終端ではない。いろいろ異なる減衰器がリレーや電子スイッチングを用いてスイッチングを行うため、経路が不完全になってしまうことは避けられず、異なる周波数における反射が生じてしまうのである。

 オシロのベンダーは、このような反射を最小限にするための努力をしているが、どれもほぼ同程度の性能しか達成できていない。つまり、通過域におけるVSWR(電圧定在波比)は完全な1対1から約1.35対1にまでなり得る。終端が回線にエネルギーを反射すると、その反射により、ケーブル長に応じてある周波数において定在波が発生する。定在波はそれぞれ異なる周波数で反射するため、異なる種類のオシロで測定すると、発生器とケーブルが同一であっても、異なる振幅となる。

 ユーザーは、オシロの入力で高品質な6dB減衰器を使用し、電力分配器の出力を減衰器に接続することにより、反射損失を6dB改善することができ、ケーブルにおける反射の影響を減少させる。

 上記のとおり、周波数に対してオシロの振幅精度を正確に校正するための方法はかなり複雑である。オシロメーカーはみな、設計者がオシロを校正する際に用いるこの複雑なシステムの設計、検証に多大な労力を注いでいる。この大変な校正を、信号発生器とケーブルだけを用いて手動で模倣しようとしても、望ましい精度での結果を得ることはできない。


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