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» 2008年06月01日 00時00分 公開

電池モジュールのセル電圧を測るその基礎概念から計測/校正の自動化まで(3/5 ページ)

[Jim Williams(米Linear Technology社),Mark Thoren(米Linear Technology社),EDN]

計測/校正の自動化

 この計測手法では、デジタル技術を用いた自動校正系を容易に構成することができる。図8に示すのは、その構成例である。これは、計測の対象となるセルが6個ある場合を想定したものとなっているが、前述したように、トランスによって直流的に絶縁されているため、電池モジュールの電圧が数百ボルトに達するとしても、校正処理を行う回路には低耐圧の部品を使用することができる。


図8 自動校正機能を盛り込んだ回路 図8 自動校正機能を盛り込んだ回路 (a)は校正データを取得するためのチャンネル、(b)は計測用のチャンネル。(a)の回路で取得した校正データを用いて、(b)の回路の校正を行う。この手法により、トランジスタ(ダイオード)のベース‐エミッタ電圧のマッチングが不要になり、温度の変化による影響も校正できる。

・校正回路の詳細

 このシステムは、パルス発生器、校正用チャンネル、計測用チャンネルおよび「PIC16F876A」を用いたコントローラ回路から構成される。図9は自動校正機能やリセット機能を含むコントローラ回路部であり、図10は開発用に用意したUSBインターフェース回路部である。

図9 コントローラ回路部 図9 コントローラ回路部 マイクロコントローラを利用して校正を自動化する。図の左下はリセット回路。
図10 USBインターフェース回路部 図10 USBインターフェース回路部 このUSBインターフェース回路は、自動校正系の開発のために用意した。

 プロセッサを利用することにより、ベース‐エミッタ間電圧にかかわる対応を簡略化することができる。それには、まず各チャンネルの入力に既知の電圧を接続し、常温の環境で電圧の計測を行う。その計測結果を基に、各チャンネルのベース‐エミッタ間電圧とゲインの初期値をプロセッサを使って求める。これらのパラメータを不揮発性メモリーに蓄えておけば、ベース‐エミッタ間電圧やゲインのばらつきに起因する誤差を校正するためのデータとして利用できる。

 図8(a)はオフセットとゲインの校正用に設けた2つのチャンネルである。これらのチャンネルは、それぞれ電池のセル電圧の上限/下限電圧に相当する0Vと1.25Vを入力とする。この状態で常温での計測値を求め、不揮発性メモリーに蓄えておく。周囲温度が変化したら、両チャンネルの計測値を基にオフセットとゲインの変化を計算し、その結果を各計測用チャンネルの計測値に反映する。ベース‐エミッタ間電圧の温度係数が各チャンネルでほぼ同一の−2mV/℃であることから、この校正方法は全温度範囲で有効に働く。

 このようにゲインとオフセットを常時校正することにより、A-Dコンバータ(図8の「LTC1867」)のゲイン、オフセットを考慮する必要がなくなる。ただし、0Vと1.25Vの基準電圧だけは正確でなければならない。とはいえ、図8のとおりそれは容易に実現でき、0Vについては、チャンネル7のように入力を短絡すればよい。一方、1.25Vの電圧は、チャンネル6のように「LT1790-1.25」によって発生させればよい。

 A-DコンバータのLTC1867では、内蔵する基準電圧源が生成する2.5Vの電圧を4.096Vに増幅してREFCOMP端子から出力する。この電圧がA-D変換のフルスケールを決める。つまり、フルスケールは単極入力ならば4.096V、両極入力ならば±2.048Vになる。このフルスケール電圧によって計測可能な最大セル電圧は3.396Vに制限される。

 このような校正回路を利用した場合の計測精度は、周囲温度25℃、入力電圧0V〜2Vの条件で1mVになる。温度変化によるドリフトは50ppm/℃となり、校正回路を持たない図4の回路で計測する場合に対して倍以上良好になる。

・ファームウエア

 図8〜10の回路を制御するためには、ファームウエアが必要となる。そのソースコードは、http://a330.g.akamai.net/7/330/2540/20080108180752/www.edn.com/contents/images/ms4255.zipからダウンロードできる。このコードは、実際の製品にも利用し得るレベルのものとして作成してある。

 このファームウエアにより、計測結果は、英Future Technology Devices International(FTDI)社のUSBインタフェース「FT245BM」を介してパソコンの画面に表示される。パソコンにFTDI社の仮想通信ポート用ドライバをインストールしておけば、プログラムによる制御が可能になる。連続的にパソコンに送信される各チャンネルの計測データは、簡単に処理できる。

 このファームウエアでは、タイマーにより1000回/秒の頻度で割り込みが発生するようになっている。これにより、パルス発生器とA-Dコンバータを制御し、A-D変換後の出力データをメモリーに格納する。このときの最新データは、割り込みのタイミングから1msだけ遅れたものになる。

 このファームウエアには自動校正ルーチンを実装してある。そのルーチンでは、基準電圧入力に対する全チャンネルのデータ、およびチャンネル6、7で得た校正データを不揮発性メモリーに蓄える。これらの値を使用して、オフセットとゲインの初期誤差と温度変化の影響を校正する。より詳しく説明すると、まず全チャンネルの入力に0Vを印加し、そのときの値を0V時の校正データとして記憶する。次に、全チャンネルの入力に1.25Vを印加して、そのときの値をフルスケール時の校正データとして記憶する。この校正フローは、製造工程での性能試験と同様に決して複雑なものではない。

 なお、このファームウエアは、計測に使用するためのデジタルフィルタ機能を含んでいる。簡単なIIR(infinite impulse response)フィルタであり、係数は0.1としている。このフィルタにより、計測値に含まれるノイズ成分が1/√10に減少する。

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