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» 2013年02月12日 07時30分 公開

LED/発光デバイス LED照明:LED照明をマイコン制御でもっと賢く、光品質・電力効率・コストを改善 (2/3)

[Patrick Carner,Texas Instruments]

制御方式の違いによる電力料金の違い

 高度なLED照明システムは、主に3つの要素で構成される。電力変換、制御、通信である(図1)。

 電力変換段は、LEDに適切な電圧と電流を供給する処理段である。商用交流電源を直流に変換する整流回路から始まり、力率改善回路(PFC回路)、DC-DC変換回路と続く。電力変換を効率的に実行するには、これらの回路を高精度かつ柔軟に制御する必要がある。

 かつては、PFC回路とDC-DC変換回路、LED制御回路を、それぞれ個別のハードウェアで実現してきた。高度な照明システムではこれらのハードウェアをマイコンとプログラムで置き換える。この置き換えによって照明システムの部品点数が減少し、部品コストが下がる。LED照明用のマイコンは電力変換回路の制御機能や通信制御機能、LED駆動機能などを備えている。たった1個のマイコンが、照明システムのプログラマブルなプラットフォームとなる。マイコンがインテリジェント照明システム全体としての調和を図りながら、電力変換、LED制御、通信の各処理段を管理する。

図1 図1 高度なLED照明システムは、主に3つの要素で構成される。電力変換、制御、通信である。いずれの処理段階もインテリジェントな制御を要求する。

 デジタル制御が有効なのは、静的な照明システムだけではない。動的な変動を伴う照明システムでもデジタル制御によってエネルギー効率を大きく改善できる。もっとも、全てのLED照明システムで同等の改善効果を期待できるわけではない。また、条件が固定された照明システムでもマイコンを採用することで電力変換処理段の設計を変更し、電力効率を高められる。

 具体的に従来のアナログ制御方式とマイコンベースのデジタル制御方式で消費電力と電力コストを比較しよう。ある町が、2000カ所の街路灯を交換するとき、電力変換効率が10%違う照明システムを検討した(図2)。街路灯1カ所の出力は160Wである。従来のアナログ制御方式では、200Wの入力電力を必要とする。これをデジタル制御に変更すると入力電力は178Wに減少する。この結果、概算では年間電力料金の約10%に相当する3万3726米ドルを節約できる。このコスト削減幅は、従来の街路灯をLEDの街路灯に変更したときの電力料金削減幅を上回る。

図2 図2 照明システムの消費電力と年間電気料金。デジタル制御ではアナログ制御に比べ、消費電力を10%削減する。2000カ所の街路灯を有するこのシステムでは、デジタル制御によって年間で電力料金を3万3726米ドルも節約できる。 (クリックで画像を拡大)

LEDのばらつきや劣化などをデジタル制御で補正

 商用ディスプレイやエンタテインメント用照明などを含む多くの用途では、LEDが出力する光の品質が大切になる。ここで高品質とは、光量と色が均一であることを意味する。

 LEDの光出力特性に影響を与える主な要因には「製造ばらつき」、「温度変化」、「経年変化」の3つがある。

 まず「製造ばらつき」について説明しよう。LEDを製造する装置が全く同じでも、完成したLEDの光出力特性には、ばらつきがある。同じロット(製造単位)のLEDはばらつきが少ないものの、異なるロット間ではばらつきが大きい。同じロットのLEDを使うことができれば、LED照明の製品ごとの特性ばらつきは少なくて済む。しかし現実的には、異なるロットのLEDで照明器具を生産することになるので、照明器具ごとの特性のばらつきは許容不可能な水準にまで大きくなりかねない。

 デジタル制御の大きな利点は、校正作業によってばらつきを補正できることにある。照明システムの生産ラインに校正工程を組み込むことで、製品ごとの均一性を維持できるようになる。

 次に「温度変化」である。LEDの温度が変化すると、光出力も変化する。この変化を補正するには、センサーによって周囲温度をモニタリングしておく必要がある。マイコンがセンサーの出力を取り込んで、照明の色と照度の変動を抑制するようにLEDの駆動条件を動的に調整する。温度変化の時定数は長いので、センサーによる温度チェックの間隔はある程度の長さが許される。このため、マイコンの負荷は少なくて済む。

 またセンサーによる周囲温度のモニタリングは、照明システムそのものの動作温度が安全な範囲内にあるかどうかのチェックにも利用できる。安全範囲を超えそうなときは、制御回路がLEDの出力を下げる、あるいは特定のLEDストリングの電源を遮断し、システム管理者にそのことを通知する。LEDは高温になると光出力が低下するとともに、劣化が早まる。LEDの温度が一定値を超えないように制御することで、LEDの動作寿命を確保できる。

 最後に「経年変化」である。LEDの経年変化は、発光色の変化として現れる。LEDに入力する電力が一定だと、発光色が時間とともに少しずつ変化していく。なお、赤色LEDは青色LEDよりも劣化が早い。マイコンベースのインテリジェントな制御であれば、経年変化をモニタリングして発光色を補正し、照明システムの全寿命にわたって同じ発光色を維持できる。

 インテリジェントな制御は、照明システムの安全性と効率も高められる。周囲の明るさに応じてLED照明の明るさを調節できるからだ。例えば、嵐のときには普段よりも街路灯の点灯時間を早めて通行の安全性を高める、明るい通りでは街路灯の明るさを弱めて消費電力を低減する、といった調節が考えられる。また例えば倉庫では、作業者が散らばって存在することが少なくない。人感センサーによって作業者が存在するスポットだけ照明を点灯することで、消費電力を節約できる。

 図2に示した街路灯の例に戻ろう。デジタル制御方式の照明システムで点灯時間を25%減らすと、年間で電気料金を6万8218米ドルも節約できる。計算式を以下に示す。

 1,819,160 kW時/年 × 夜間点灯時間率75% = 1,364,370 kW時/年

 1,364,370 kW時/年 × 0.15米ドル/kW時 = 20万4,656米ドル/ 年

 初期の年間電気料金(100%点灯)が27万2874米ドルで75%点灯での年間電気料金が20万4656米ドルなので、年間の差額が6万8218米ドルになるという計算である。すでに述べたデジタル制御によるコスト削減効果と併せると、合計で年間10万1944米ドル、約33%相当も電気料金を節約できることになる。

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