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» 2013年02月12日 07時30分 公開

LED/発光デバイス LED照明:LED照明をマイコン制御でもっと賢く、光品質・電力効率・コストを改善 (3/3)

[Patrick Carner,Texas Instruments]
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リモート制御がもたらすシステムの最適化

 インテリジェントなLED照明システムが装備しておかなければならない機能に、リモート接続機能がある。インテリジェントなシステムでは動作条件を自動管理する。照明システムではエネルギー効率を高めるとともに照明の品質を高い水準に維持できる。ただし、リモート接続を実現する通信機能が備わっていない場合は、管理アルゴリズムはプリセットされたプログラムの内容に従うことになる。システムを構成する各デバイスのレベルでは最適化が図れるものの、システム全体での最適化はしていない。

 通信機能が各デバイスに装備されていると、照明システムの全体を最適化するように、各デバイスの動作条件を調節できる。リモートで調光し、消灯し、緊急事態に対応できるようになる。作業員が照明の明るさを調節するときでも、個々の照明器具の明るさを現場で調整していくのではなく、中央指令室といった離れたところからシステム全体の明るさを調整できる。

 このようなインテリジェントなシステムを実現するには、各デバイスがコマンドを受信するだけではなく、各デバイスが自分の状況を送信する必要がある。各デバイスは簡単な自己診断機能を備えており、LEDその他の不具合に関する情報を中央指令室に送信するとともに、必要とされる保守手段を知らせる。定期的な保守点検の代わりに、中央指令室では必要に応じて保守作業員を現場に派遣することになる。

 このようにリモート制御では、照明システムをダイナミックに調整できる。例えば街路灯の点灯時間は夏時間と冬時間を切り替える時期に合わせて変更されるのだが、個々の街路灯の設定を現場で切り替えるのではなく、中央指令室から遠隔操作で全ての街路灯の設定を切り替えられるようになる。その他、深夜にスポーツイベントが終了した後にイベント開催場所周辺の道路照明を調整したり、繁忙期に工場の照明点灯時間を延長したりといった形で点灯スケジュールを臨機応変に変更できる。緊急事態に対応した点灯も可能なので、安全性が向上する。

 照明システムの消費電力や不具合などを1つ1つのデバイスごとにモニタリングすることは、故障の早期発見にも役立つ。すなわち運転コストと保守コストを抑えることになる。

 エンタテインメント向け照明でも、リモート接続機能は必須といえる。この分野ではDALIやDMX512、KNXなどの通信プロトコルが利用されている。

電力線を有線通信に活用

 既存のインフラストラクチャを利用する有線通信手段に、電力線通信(PLC:Power Line Communication)がある。PLCは交流電源線を有線通信路として利用する通信技術であり、通信のために専用の有線ケーブルを敷設する必要がない。照明システムにとっては重要な通信技術である。

 PLCの技術仕様が有するさまざまな機能の全てを利用するのではなく、一部の機能だけを活用した仕様に「PLC-Lite」がある。PLC-Liteはプロトコルオーバーヘッドが小さく、データ転送速度の低い通信手段の選択肢となる。また初期の導入コストは、PLCのフル規格である「G3」や「PRIME(PoweRline Intelligent Metering Evolution)」などに比べるとずっと少なくて済む。

 PLC-Liteの仕様は緩やかなので、設計の自由度が大きい。通信路の電磁環境が良好でない場合でも、電磁干渉に強い通信チャネルを構築できる。例えば住宅のLED電球と壁面のスイッチを接続するネットワークといった用途に適する。

 照明システムの通信手段には無線通信もある。モジュール構造のアーキテクチャにすることで、顧客の要求条件に最も適した通信技術を選べるようになる。

 有線通信でも無線通信でも、データはマイコンが標準的に装備しているI2CポートあるいはSPIポートを介してやりとりすることになる。

照明システムにおけるマイコンの実装

 一般的には、システムを構成するマイコンの数は少ない方がコストが低い。従って1個のマイコンで照明システムを構築することが望ましい。電力変換、LED制御、センサー入力、リモート接続といった機能の全てを備えたマイコンが照明システムにふさわしい。

 ただし一部の照明システムでは、高電圧の回路と低電圧の回路を含むので、電気的に両者を分離する必要がある。高電圧回路の制御マイコンと低電圧回路の制御マイコンの合計2個のマイコンを使い、照明システムを実現することになる(図3)。2個のマイコンは、I2CまたはSPIインタフェースと絶縁境界を介して通信する。

図3 図3 2個のマイコン(図中の「PICCOLO」)で構成した照明システム。左側が高電圧回路、右側が低電圧回路。中央の点線部で電気的に絶縁されている。 (クリックで画像を拡大)

 LED照明システム用のマイコンを考えたとき、マイコンはさまざまなパワーエレクトロニクス技術に柔軟に対応できることが望ましい。具体的には、以下のような機能を搭載していることが求められるだろう。

  • 電力変換処理段をより高性能で高効率に制御できるように、デューティサイクルとデッドバンドを高い分解能で調整可能なPWM生成回路。最先端のPWMは非常に精密な色表現と調光を実現できる。例えば、16系統のPWM出力を備えたマイコンは、最大16本のLEDストリングを独立に制御する。
  • サンプリング速度が6Mサンプル/秒のA-D変換回路。A-D変換回路とPWM回路の組み合わせによって緊密なフィードバックループを構成できる。この結果、システムの動作条件や周囲環境の変化に素早く対応できるようになる。
  • 過電圧保護回路と過電流保護回路。PWMがトリップしたときにCPUをバイパスし、あらかじめ設定してあったトリップ状態用の処理プログラムを実行し、システムの損傷を防ぐ。
  • I2C、SPI、UART、USBおよびCANのインタフェース機能。大半のLED照明アプリケーションに適したファームウェアのドライバが組み込んであること。

 LED照明システム用に開発されたマイコンの例が、Texas Instrumentsの32ビットマイコン「C2000 Piccolo(F2082x/3x/6x)」である(図4)。TMS320C28xプロセッサコアと制御補償器アクセラレータ(CLA:Control Law Accelerator)のデュアルコア構成によって、照明システムが必要とする処理の全てを実行できる。例えばTMS320C28xコアは電力変換とLEDストリングの制御を担当し、CLAがPLCのアルゴリズム処理を担当する。

 より高速なPLC通信を利用する照明システム向けには、「Piccolo F2806x」マイコンが適している。F2806xはビタビ複素演算ユニット(VCU:Viterbi Complex math Unit)を搭載しており、PLCアルゴリズムの処理速度を7倍に高める。

図4 図4 Texas Instrumentsの32ビットマイコン「C2000 Piccolo(F2082x/3x/6x)」のブロック図である。 (クリックで画像を拡大)
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