メディア
特集
» 2019年12月26日 11時00分 公開

新規格IEEE 802.11bt:最大90Wを供給できる高電力PoE、IoTの用途を切り開く (1/2)

「IEEE 802.11bt」に対応する新しいPoE(Power over Ethernet)は、最大で90Wの電力を供給できるようになった。これによって、エッジコンピューティングを含め、IoTの用途がさらに拡大する可能性がある。

[Riley Beck(Product Marketing Manager, ON Semiconductor),EDN Japan]

エッジコンピューティングの用途を広げる高電力PoE

 電力とネットワーク接続はIoT(モノのインターネット)における重要課題であり、あらゆる種類の電気機器および電子機器に影響を与える。PoE(Power over Ethernet)の新しい規格により、データ通信と電力供給の両方を行うことができ、ネットワークエッジでより多くの処理が可能になるとともに、最新コネクテッドシステムの性能を向上できる。

 IoTでは、ネットワーク接続が全てだ。センサー、アクチュエーター、監視システムをクラウドにリンクすれば、世界中のどこからでもアクセス可能なデータの集約化が可能になる。このデータを分析することで、潜在的な問題を早期に特定し、システムを最適化する新しい方法を提供してエネルギーコストを低減できるようになる。データとネットワーク接続を1本のケーブルに統合することにより、プロセス全体の効率化を図ることも可能だ。

 電池で駆動し、無線通信に対応する小型機器は、電気的ノイズの多い工場では信頼性が問題になる可能性がある。IoTのエンドポイントで求められる電力とデータが増加するほど、信頼性の高い電力供給とデータ接続が必要になる。

 しかし、このデータを全てクラウドに送るとなると、データ帯域幅の点で課題がある。リアルタイムアプリケーションでは、レイテンシ(遅延)も重要だ。もし、全てのIoT機器が地球の反対側にあるクラウドサーバへの高速アクセスを同時に必要とするならば、巨大なボトルネックが生じるだろう。

 この問題を解決する一つの方法は、末端機器のできるだけ近くで、より多くのデータを処理することだ。いわゆる「エッジコンピューティング」である。

 これを行うには、データをローカルで分析し、集約した結果だけを中央サーバに送り返すことが必要になる。残念ながら、このレベルの処理を行うには、ネットワーク末端にも、より多くの電力が必要だ。

 PoEは、データ伝送と同じイーサネットケーブルで電力を供給し、個別接続をなくすことでこの課題に対処できる重要な技術である。IoTは、生産ラインの目視検査や監視用カメラなど、所要電力が小さいネットワーク機器で既にうまく機能している。より多くの種類のエッジコンピューティングシステムに電力とデータを供給するために、PoEの普及が進んでいるのである。

 PoEの新規格「IEEE 802.3bt」では、最大90Wの電力供給を実現できるようになる。そのため、新しい種類のIoTエンドポイントが可能になるだろう。一例として、高機能コネクテッド照明、高解像度デジタルサイネージ、PTZ(パン/チルト/ズーム)機能などを備えた監視カメラ、さらには画像解析や物体認識向けの機械学習アルゴリズムを実行するエッジサーバなどがある。受電側機器(PD)は、表1に示すように所要電力量に基づいて分類される。

クラス 供給電力
1 3.84 W
2 6.49 W
3 13 W
4 25.5 W
5 40.0 W
6 51.0 W
7 62.0 W
8 71.3〜90 W
表1:PoE受電側機器(PoE-PD)の分類

 IEEE 802.3btは、IP電話に高解像度テレビ会議機能を追加するなど、既存のアプリケーションの一部にメリットをもたらすが、エッジコンピューティングにおいて、全く新しい種類の機会を開くものでもある。これは、一般的にIoTの、特にインダストリー4.0において進化の重要性が高まっている部分であり、機器の近くに設置したセンサーやアクチュエータの処理能力をさらに高める。

 無線ゲートウェイは、エッジコンピューティングの重要要素の一つだ。これらの機器は、工場現場の至る所に配置されたセンサーやアクチュエータからの信号を集約するが、生データを全てクラウドに送信するのではなく、ローカルで処理する。

 ローカル処理に対する需要が高まっているのは、特に機械学習を利用して生産性向上を図る場合だ。警報やしきい値違反発見のためのデータ監視と同時に、これらのゲートウェイはデータを蓄積し、情報ストリーム内の「隠れた」パターンを解析していく。こうした解析により、予知保全などが可能になる。これらの解析結果は中央サーバに送信され、ユーザー用のデータダッシュボードの一部となる。

 このレベルのエッジプロセシングには、単純な制御アルゴリズムを扱うだけのマイクロコントローラーよりも消費電力が多いデバイス、すなわち高性能プロセッサやアクセラレーターが必要になる。PoEで供給できる電力を従来よりも大幅に拡張することにより、ネットワークのまさに“エッジ”で非常に高度なアルゴリズムを実行する可能性が広がる。

 電力供給の増加はネットワーク上の他の機器にもプラスの効果をもたらし、1個のイーサネットスイッチからでも多数の低電力機器に電力を供給できるようになる。現在では、多くの機器がネットワークに接続されているため、コネクテッド照明システムでのLED照明器具など、多くのアプリケーションにとって、電力供給に関してより多くの選択肢が得られる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.