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FFTアナライザーの歴史と選定するための仕様の理解FFTアナライザーの基礎知識(1)(4/5 ページ)

» 2020年06月11日 11時00分 公開
[TechEyesOnline]

FFTアナライザーを選定するための仕様の理解

 FFTアナライザーのカタログに書かれている仕様を理解して、用途にあった測定器を選ぶ必要がある。ここでは主な仕様項目について解説を行う。

アナログ入力

 FFTアナライザーは電圧信号だけではなく、さまざまな振動や音響のセンサーを接続して利用する。プリアンプ内蔵のセンサーを容易に接続できるように、アンプを駆動する定電流電源を組み込んだ製品が多い。プリアンプ内蔵のセンサーのカタログにはCCLD(Constant Current Line Drive)、IEPE(Integrated Electronics Piezo-Electric)と書かれている。また、各センサーが固有の呼び方をしている場合もあるので注意が必要である。例えば、PCB Piezotronics(米国)のICP、Brüel & Kjær(デンマーク)のDelta Tronなどがある。

 FFTアナライザーは1chの製品から100chを超える製品まである。非絶縁で測定をする場合は、測定点からコモンモード電流が信号線に流れる可能性がある。このため多くのFFTアナライザーでは絶縁入力となっている。一部の製品では入力が絶縁されていないものがあるため、注意が必要である。測定対象に高いコモンモード電圧が印加されている際には、FFTアナライザーのケース‐端子間の耐電圧では不足する場合がある。そのような場合は、耐電圧の大きな絶縁アンプを外部に接続する必要がある。

 入力信号がフルスケールを超えてしまうと波形ひずみが生じて、信号の正しい周波数分析ができなくなる。FFTアナライザーには過大入力を検出して表示する機能があるので、過大入力でないことを確認してから測定を行う。

周波数範囲

 振動や音響の周波数分析を行う場合は、100kHzまでの周波数帯域があれば十分である。最近のFFTアナライザーの多くは24ビットの高分解能A-D変換器を搭載しており、100kHzまでの周波数分析を行える能力がある。

 FFTアナライザーの仕様には、振幅フラットネスや高調波ひずみの特性についての記載がある。これらの仕様は測定結果に影響する場合があるので、機種選定では確認する必要がある。

ダイナミックレンジ

 アナログ入力仕様で重要なのはダイナミックレンジである。ダイナミックレンジが大きければ、小さな信号から大きな信号まで同じレンジで測定することができる。同じレンジであればレンジ間誤差を考慮する必要はなくなる。最近のFFTアナライザーは100dB以上のダイナミックレンジを持っている。

 デジタルオシロスコープやメモリレコーダーにもFFT解析機能はあるが、ダイナミックレンジの仕様の記載はない。

フィルター

 FFTアナライザーには、エリアジングを防止するためのフィルターがA-D変換器の入力部に取り付けられている。このフィルターは広いダイナミックレンジで特性が保証されている。

 また、騒音測定を行う場合には人の可聴特性に合わせたフィルターを使用する。A特性は小さい音、C特性は大きい音の聴感として近似して作られている。Z(または FLAT)特性は平たんな特性となっている。

 A、C、Zのフィルター特性はJIS C 1509-1(IEC 61672-1)に掲載されている。

図11. 周波数重み特性(A、C、Z)

 騒音計とFFTアナライザーを組み合わせて測定を行う場合は、いずれの製品にも可聴特性フィルター設定機能があるため、二重にフィルターを設定しないように注意が必要である。

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