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FFTアナライザーの測定事例と校正FFTアナライザーの基礎知識(3)(1/5 ページ)

低周波信号の周波数成分を観測するFFTアナライザーについて解説する連載第3回。最終回となる今回は、「FFTアナライザーの測定事例」「FFTアナライザーの校正」について説明する。

» 2020年08月17日 11時00分 公開
[TechEyesOnline]
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 本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。

FFTアナライザーの測定事例

 FFTアナライザーは、振動や音響の分野において、センサーなどの周辺機器と組み合わせ、研究開発から保守の現場まで幅広く使われている。ここではFFTアナライザーを使った具体的な応用事例について紹介する。

回転機器の異常診断

 工場やビルには、モーターを使ったさまざまな設備がある。モーターなどから発生する回転力は歯車、軸受け、カップリング、プーリーなどを介し、機器に動力として伝達される。この間にある部品の破損や軸ずれなどが要因となり、異常な振動や騒音が生じる。回転機器は頑丈なケースに構成部品が実装されているため、直接人が見て異常を見つけることはできない。そのためFFTアナライザーと加速度センサーなどを使って診断を行う。

 回転機器の異常の要因には、おおよそ次のものがあげられる。

1.不釣り合い(アンバランス)
 回転体の偏心、ホコリの付着、軸受けの隙間の過多などで回転速度に同期した正弦波的な振動になる。遠心力による振動のため、回転速数が小さくなると振動が減少する特性がある。

2.ミスアライメント
 カップリングで結ばれた2本の回転軸の中心が一致していない時に生じる回転軸方向の振動であり、振動周波数は回転速度に比例する。幾何学的なずれによる振動のため、回転速度による変化は少ない。

3.ガタ
 軸受の取付けボルトのゆるみなどから発生する非線形振動であり、振動には回転速度に比例した高調波成分が多く含まれている。

4.自励振動に伴う異常
 ポンプや送風機で生じるサージング、軸受油膜が原因となるオイルホイップ、高圧蒸気タービンローターで発生するスティームホワールは、回転体や配管などの固有振動による。このため、回転速度が変動しても周波数の変動はない。

5.歯車のかみあい
 歯車の歯がかみあう瞬間およびかみあいから離れる瞬間に、歯車のばね剛性の急激な変化によって振動が発生する。歯車の摩耗、軸の偏心、歯車のキズなどによって振動が増えることがある。

6.転がり軸受の損傷
 転がり軸受は長期の使用によって摩耗や劣化が生じる。これによって、軸受からの振動や騒音が発生する。
 これらの異常によって振動が増加するため、定期的にFFTアナライザーを用いて点検を行えば、回転機器を分解しなくても異常を検出できる。設備の診断を行う場合は、判定機能を持ったFFTコンパレーターの利用が適している。

図1:FFTコンパレーターを使ったベアリングの異常振動診断
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