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「メモリレコーダー」とはメモリレコーダーの基礎知識(1)(1/4 ページ)

電子回路技術者がよく使うオシロスコープとメモリレコーダーはよく似ているが異なるところがあり、それぞれ用途に適した設計となっている。本連載ではメモリレコーダーの歴史、製品の種類、機種選定での留意点、製品の内部構造、使用上の注意点、利用事例の紹介などメモリレコーダーを理解する上での基礎知識を紹介していく。

» 2019年06月26日 11時00分 公開
[TechEyesOnline]
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 本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。

はじめに

 メカトロ機器、電力設備、機械、材料、バイオなど幅広い分野で波形観測に使われるのが波形記録装置の一種であるメモリレコーダーである。現在のメモリレコーダーは12ビット以上の高分解能A/D変換器と波形記録メモリで構成された製品であるが、歴史は古く機械的な仕組みによって写真フィルムや感光紙に波形を記録する装置から始まっている。その後、記録媒体として感熱紙や磁気テープを使う波形記録装置なども登場してきたが、現在ではメモリレコーダーに集約されている。

 電子回路技術者がよく使うオシロスコープとメモリレコーダーはよく似ているが異なるところがあり、それぞれ用途に適した設計となっている。今回の解説記事ではメモリレコーダーの歴史、製品の種類、機種選定での留意点、製品の内部構造、使用上の注意点、利用事例の紹介などメモリレコーダーを理解するうえでの基礎知識を紹介していく。

 記事執筆には長年にわたって幅広い分野にメモリレコーダーを設計、生産、販売している日置電機の協力を得た。

図1:さまざまな波形測定器

歴史的な波形記録装置

電磁オシログラフ

 ブラウン管を用いたオシロスコープが発明される以前から使われていた波形測定器である。電磁オシログラフの原理は1893年、フランスの物理学者アンドレ・ユージン・ブロンデル(Andre-Eugene Blondel 1863〜1938年)によって考案され、その後イギリスの物理学者であり電気工学のエンジニアであるウィリアム・ダッデル(William Du Bois Duddell 1872〜1917年)によって改良され、測定可能な周波数が50Hzを超えるものを実用化した。

 電磁オシログラフは多チャンネルが可能であったため、電力や機械の分野で1980年代くらいまで広く使われた。

 動作原理は指示計器(メーター)と同じで、メーターの針の代わりに小さな鏡を付けたものである。光源からの細い光を鏡に当てて、鏡が電気信号により振動することによって光が左右に振れる。この光を移動するフィルムや感光紙に当てて波形を記録していく。

図2:電磁オシログラフの原理図

 日本では1924年に横河電機が電磁オシログラフを国産化した。その成果は1928年に電気学会で「電磁オッシロとその応用(青木晋、多田潔、友田三八二)」として発表された。

図3:電磁オシログラフ(1924年) 提供:横河電機

 電磁オシログラフの構造は単純であるが、初期のモデルは写真フィルムに波形を記録するため現像が必要なこと、電気信号を機械的な変化に変換する方式であるため周波数帯域が数キロヘルツくらいまでとなっていた。その後、写真フィルムから紫外線感光紙を使うようになり、現像をしなくても波形を見ることができるようになった。

 電磁オシログラフの後を引き継いだのは、サーマルアレーヘッドを使って最速500mm/秒で感熱紙に波形を記録するタイプの製品であるが、波形を直接紙へ記録する需要が減少して、半導体メモリに記録や保存を行うメモリレコーダーに代わっていった。

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