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» 2017年01月05日 10時00分 UPDATE

アナログ回路設計講座(10):第4世代の高電圧バッテリ・スタック・モニタによる最先端のバッテリ・マネージメント・システム(BMS)への発展

ハイブリッド電気自動車(HEV)、電気自動車(EV)のリチウムイオン・バッテリ向けの最新バッテリ・マネジメント・システム(BMS)技術を紹介する。バッテリセルを高速、高精度に監視できるとともに、低ノイズ、高い安全性を実現するBMS技術だ。

[PR/EDN Japan]
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概要

 リチウムイオン・バッテリが長期間にわたって確実に動作することが期待される場合、バッテリには相当な注意が必要になります。リチウムイオン・バッテリは、完全に放電する直前の充電状態(SOC)になるまで動作することはできません。リチウムイオン・セルの容量は時間の経過とともに減少し、また用途により枝分かれするので、システム内の全てのセルを管理して、制限されたSOCの範囲内に維持する必要があります。

 1台の車両に十分な電力を供給するには、数十個あるいは数百個のバッテリ・セルが必要です。これらのセルは、1000V以上になる直列の長い構成にします。バッテリ駆動の電子機器はこの非常に高い電圧環境で動作して、同相電圧の影響を排除しつつ、これらのバッテリ列内の各セルを差動で測定して制御する必要があります。電子機器は、バッテリ・スタックからの情報を変換して処理の中心点に伝達できる必要があります。

 さらに、車内や他の大電力アプリケーションで高電圧のバッテリ・スタックを動作させる場合には、大きな電気的ノイズや広い温度範囲での動作などの過酷な条件にさらされます。バッテリ管理電子機器は、動作範囲、寿命、安全性および、信頼性を最大限に高めつつ、コスト、サイズおよび重さを最小限に抑えることを期待されています。

 2008年に、リニアテクノロジーは最初の高性能マルチセル・バッテリ・スタック・モニタ、LTC6802を発表しました。その主な特長を挙げると、LTC6802は、最大12個のリチウムイオン・セルを最大0.25%の全測定誤差で13ms以内に測定します。また、多数のLTC6802デバイスを直列に接続して、高電圧バッテリの長い列の各セルを同時にモニタリングすることができます。リニアテクノロジーは、ここ数年間に何回もLTC6802の性能を向上させました。これら全てのデバイスは、ハイブリッド電気自動車(HEV)、電気自動車(EV)および、その他の高電圧、大電力バッテリ・スタック内部での高精度バッテリ管理を目的としています。

最先端の高電圧バッテリ・スタック・モニタ

図1:リニアテクノロジーの最新のマルチセル・バッテリ・スタック・モニタ「LTC6811」

 LTC6811はリニアテクノロジーの最新のマルチセル・バッテリ・スタック・モニタで、超安定電圧リファレンス、高電圧マルチプレクサ、16ビットΔΣ型A/Dコンバータおよび、1Mbps絶縁型シリアル・インタフェースを内蔵しています。LTC6811は、最大12個の直列接続バッテリ・セルの電圧を0.04%より高い精度で測定します。プログラム可能な8種類の3次低域通過フィルタ設定により、LTC6811は抜群のノイズ低減性能を発揮することができます。最高速のADCモードでは、全てのセルを290μs以内に測定することができます。

 リニアテクノロジー独自の2線式isoSPIインタフェースを使用して、複数のLTC6811を相互に接続し、同時に動作させることができます。isoSPIインタフェースは、全てのLTC6811に内蔵されており、ツイストペア・ケーブルのみを使用して、最大1Mbpsの速度および最長100メートルのケーブルで高いRFノイズ耐性を実現します。2つの通信オプションが用意されています。LTC6811-1では、複数のデバイスがデイジーチェーンで接続され、1つのホスト・プロセッサが全てのデバイスに接続されます。LTC6811-2では、複数のデバイスがホスト・プロセッサと並列に接続され、各デバイスのアドレスは個別に指定されます。

 LTC6811は−40℃〜125℃での動作が完全に規定されています。ISO 26262(ASIL)準拠システム向けに設計されており、その冗長電圧リファレンス、ロジック・テスト回路、チャネル間相互テスト、断線検出機能、ウォッチドッグ・タイマおよび、シリアル・インタフェースでのパケット・エラー検査により、幅広いフォルト検出範囲を備えています。リニアテクノロジーのLTC6804を使用する既存の設計の場合、LTC6811は差し込み置き換え品であり、しかもフィルタ遮断周波数、パッシブ方式およびアクティブ方式のバランス調整機能、新しいADCコマンドが追加されており、機能的安全性に対するフォルト検出範囲が広くなっています。

ISO 26262と機能的安全性

 LTC6811を使用すると、高信頼性、高安定性、および高測定精度のシステムが可能になります。これらのシステムは、高電圧、極端な温度、活線挿入、電気的ノイズがある環境で数年間の動作が期待されます。また、LTC6811は、ISO 26262規格によって規定される自動車の機能的安全性をサポートします。ISO 26262は、電子および電気システムの誤動作によって生じる自動車での潜在的な危険性に体系的に対応するものです。このためには、セル電圧測定装置などの重要な電子機器の正常動作をシステムが絶えず確認する必要があります。これを実現するため、LTC6811は、正常動作を検証する多彩な診断機能を内蔵しています(以下参照)。

  • バッテリとモニタの間の断線検出
  • 主要リファレンスの精度が±5mV以内であることを確認する補助電圧リファレンス
  • セル測定精度が±0.25%以内であることを確認する12セルのスタック電圧測定
  • マルチプレクサとA/Dコンバータの精度が0.01%以内であることを確認するデュアルチャネル測定
  • フィルタ動作を確認するデュアルフィルタ同時測定
  • 電源電圧の内部測定
  • メモリのセルフテスト
  • 汎用I/Oを使用するセンサおよび外部デバイスによる冗長モニタリング

精度

 卓越した精度を実現するため、LTC6811は専用の表面下ツェナー電圧リファレンスを内蔵しています。表面下ツェナー電圧リファレンスは、長時間、全動作条件で抜群の長期安定性および精度を示します。結果は、LTC6811が全てのバッテリ・セルを1.2mV未満の誤差で測定する能力を示しています。

図2:埋め込みツェナー電圧リファレンスの抜群の温度ドリフト性能

 さらに、バッテリ電圧のノイズをフィルタで除去することにより、ノイズが存在する場合でもLTC6811は卓越した測定精度を保証します。これはΔΣ型A/Dコンバータを使用することにより達成されます。ΔΣ型A/Dコンバータにより、入力は1回の変換の間に何度もサンプリングされ、その後デジタル・フィルタで処理されます。結果として、測定誤差の発生源としてのノイズを除去する低域通過フィルタが組み込まれます。遮断周波数はサンプル・レートによって設定されます。LTC6811は、プログラム可能なサンプル・レートと8種類の選択可能な遮断周波数を備えた高速3次ΔΣ型A/Dコンバータを使用します。その結果、ノイズが大幅に低減され、8種類のプログラム可能な測定レートが得られ、全12セルのバッテリを290μsec以内に測定することができます。

図3:LTC6811のΔΣ型A/Dコンバータ (クリックで拡大)

追加機能

 LTC6811は、バッテリ・システムの最も肝心な場所で動作するよう設計されており、バッテリ・セルに直接接続されます。BMSマイクロプロセッサと周辺デバイスの間であるこの位置では、LTC6811は、電流や温度などのバッテリ・センサをモニタして、これらの値をセルの測定値と互いに密接に関連付けることができます。LTC6811は、さまざまな形でこの位置を利用します。

 LTC6811は、デジタル入力、デジタル出力、またはアナログ入力として動作することができる非常に柔軟な汎用I/Oを内蔵しています。アナログ入力として動作する場合、LTC6811はV−から5Vまでの任意の電圧をセルの測定値と同じ測定精度で測定することができます。さらにに、LTC6811は、これらの外部信号や12セルのスタック電圧とセルの測定を同期させることができます。また、LTC6811は、デジタルI/Oを介してI2CまたはSPIのスレーブ・デバイスを制御する組み込み機能を備えています。これによりLTC6811は、拡張アナログ入力のマルチプレクサや較正情報を格納するEEPROMなど、より複雑な機能を制御することができます。

 LTC6811はパッシブ方式のバランス調整FETを内蔵しており、セルを個別に放電することや、より大型で大電力の外付けFETを直接制御することができます。バッテリ・パックが動作していない場合など、低消費電力状態のときにセルを放電するようにLTC6811を構成することができます。さらに、各セルの放電出力をオンにする時間は、他のセルとは無関係にすることができます。これにより、バッテリ・モニタが動作していないとき、長時間にわたるバランス調整が可能になります。これらの同じバランス調整ピンは、リニアテクノロジーのアクティブ方式バランス調整回路LT8584を制御するシリアル・インタフェースとして動作することができます。

図4:アクティブ方式のバランス調整機能を備えた12セルのバッテリ・スタック・モニタ (クリックで拡大)

 LT8584はモノリシックのフライバックDC/DCコンバータで、容量が不揃いのセル・バッテリ・スタックで容量を99%以上回復させることができます。LTC6811は、LTC6811のSPIマスタ機能を使用して、リニアテクノロジーのSPIベースのアクティブ方式バランス調整デバイスLTC3300に接続することができます。LTC3300は、フォルト保護機能を内蔵した双方向アクティブ方式バランス調整用コントローラICで、12セル以上の隣接セルとの間で電荷を効率的に転送することができます。

Linduino One

 LTC6811の機能を統合して開発時間を短縮するため、LTC6811は、リニアテクノロジーの新しいLinduino Oneによって全面的にサポートされています。Linduino OneはArduino Uno互換のマイクロコントローラ基板で、USBで完全に絶縁されており、LTC6811デモボードに直接接続します。このプラットフォームは、内蔵のブートローダによるインサーキット・ファームウェアの素早い更新により、シンプルで安定したハードウェア開発プラットフォームを提供します。Arduinoはオープンソースのプラットフォームであるため、BMS設計者はシンプルで強力なArduino統合開発環境(IDE)を簡単に利用することができます。bmsSketchbookと呼ばれるコードのライブラリには、標準のCコンパイラでコンパイルするよう設計されたLTC6811のサンプル・コードがあります。

図5:Linduino OneはArduino Uno互換のマイクロコントローラ基板で、USBで完全に絶縁されており、LTC6811に直接接続する

 例えば、bmsSketchbookには、構成情報の読み出しおよび書き込み、セル電圧の読み出しおよび書き込み、セルフテストや冗長テストの実行、パッシブ方式バランス調整の制御などのルーチンが含まれます。

まとめ

 リニアテクノロジーのLTC6811は、第4世代の高性能マルチセル・バッテリ・モニタです。LTC6811は、旧世代のLTC6804とピン互換かつソフトウェア互換です。LTC6804と比較すると、LTC6811は低コストで、フィルタ遮断周波数、パッシブ方式およびアクティブ方式のバランス調整機能、新しいADCコマンドが追加されており、機能的安全性に対するフォルト検出範囲が広くなっています。また、LTC6811は、リニアテクノロジーのLinduino Oneによって評価および開発が全面的にサポートされています。

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提供:リニアテクノロジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年1月31日
















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