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コモン・モード雑音

» 2010年09月24日 00時00分 公開
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コモン・モード雑音

 コモン・モード雑音とは、2つの信号ラインに載った同相の雑音成分のこと。狭義の定義はこうだが、広義にはプリント基板上の信号ラインとグラウンドに載った同相の雑音成分もコモン・モード雑音に含まれる。なお、コモン・モード雑音の対義語は、ノーマル・モード雑音、もしくはディファレンシャル・モード雑音である。いずれも、2つの信号ラインに載った逆相の雑音成分を指す。

EMIの主要因

 現在、このコモン・モード雑音が注目を集めている。その理由は、電子機器から放射される電磁雑音(EMI:Electro-Magnetic Interference)の主要因と目されているからだ。例えば、USBやHDMI、LVDS、EMLなどの高速インターフェースを構成する差動信号ラインにコモン・モード雑音が載った場合、長い信号ラインがアンテナとなって機能し、高いレベルのEMIが放射される。

 差動信号ラインに載るコモン・モード雑音の発生源は、外来雑音の場合もあるが、その多くは高速インターフェースのトランスミッタ(トランシーバ)ICを実装したプリント基板のグラウンド層/面における電圧の揺れ(振動)である。理想的な場合であれば、グラウンド層/面の電位は0Vのはずだ。しかし実際は、理想的な状態にない。グラウンド層/面は無限に広くない上に、金属膜には抵抗成分がある。従って、グラウンド層/面はある程度のインピーダンスを持っている。ここにLSIの動作、特に出力回路のスイッチングによって発生する高周波電流が電源部に流れ込むため、グラウンド層/面にも電圧の揺れ(振動)が発生しているのが実情である。グラウンド層/面の上にトランスミッタICがあれば、その出力である差動信号に同相の雑音成分が載ってしまうわけだ。

対応策はコモン・モード・チョーク

図1 図1 コモン・モード・チョーク・コイルの原理
(a)はコモン・モード・チョーク・コイルの構造図。フェライト・コアに2つのコイルを巻き付けており、2つのコイルに同相電流が流れると、それぞれに磁界が発生してフェライト・コア内部で足し合わされる。この結果、インピーダンスが増加し、同相信号成分だけが除去される仕組みである。(b)は等価回路である。

 このコモン・モード雑音を発生源とするEMIを低減するのは厄介だ。通常のEMI対策では、フェライト・ビーズやEMIフィルタ、バイパス・コンデンサなどの部品を伝送路や電源部に適用する。例えば、伝送路に使う場合は、信号伝送に必要な低周波成分はそのままに、EMIの発生源となる高周波成分を除去するように設計する。つまり、周波数成分の違いを利用するわけだ。

 ところが前述のような高速インターフェースは、伝送速度が高まっているため、信号伝送に必要な周波数成分と、EMIの発生源となる減衰すべき周波数成分との差が小さくなっている。例えば、フェライト・ビーズを伝送路に適用すると、EMIの発生源となる特定の周波数成分を除去できるものの、それと同時に信号伝送に必要な周波数成分も取り除いてしまう。これでは、通信することができなくなる。

図2 図2 コモン・モード雑音を低減するもう1つの方法
差動伝送路の終端抵抗である100Ωを50Ωと50Ωの2つに分割し、その中点とグラウンドの間にコンデンサを接続することで、コモン・モード雑音を低減できる。使用するコンデンサのインピーダンス特性をノイズ周波数に合わせることで、ターゲットとなるEMIの周波数のコモン・モード雑音を低減できる。

 そこで、登場するのがコモン・モード・チョーク・コイルである(図1)。このEMI対策部品は、上記の部品とは異なる手法で発生源を除去する。具体的には、信号の伝送モードの違いを利用する。高速のインターフェースで伝送する差動信号、すなわち逆相信号はそのまま通過させ、同相の雑音成分だけを取り除ける。つまり、高速インターフェースの伝送規格を満足すると同時に、EMIの発生源を除去できるわけだ。このほか、図2のように、差動伝送路の終端抵抗である100Ωを、50Ωと50Ωに分割し、その中点にコンデンサを配置してコモン・モード雑音を低減する方法も一般的に採用されている。

 ただし、上記の2つのEMI対策法は、あくまで対処療法にすぎない。EMI対策は根治療法を目指すべきだろう。従って、EMIの本来の発生源であるプリント基板上のグラウンド層/面に対して、減衰すべき周波数の電圧の揺れを(振動)を抑えるために、その周波数の電源インピーダンスを下げるという対策を打つべきである。


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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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