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電源回路の制御モード:電圧モード制御、電流モード制御、リップル制御

» 2011年01月21日 00時00分 公開
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電源回路の制御モード:電圧モード制御、電流モード制御、リップル制御

 電源回路の制御モードとは、出力電圧の安定化に用いるフィードバック・ループの帰還方式のこと。大きく分けると電圧モード制御方式や電流モード制御、リップル制御(ヒステリシス制御)方式がある。現在市販されているスイッチング・レギュレータIC(DC-DCコンバータIC)には、この3つの方式のうちのいずれかが採用されている。

主流は、電圧モードと電流モード

 電圧モード制御方式と電流モード制御方式、リップル制御(ヒステリシス制御)方式は、いずれも一長一短がある。以下の、1つ1つ見ていこう。

図1 図1 電圧モード制御方式

 最も基本的な方式は、電圧モード制御方式である(図1)。これは、フィードバック・ループを介して、出力電圧のみを入力に帰還する方式である。そしてエラー・アンプ(誤差増幅器)で基準電圧と比較し,その差に相当する電圧を三角波と比較してPWM信号のパルス幅を決めて、出力電圧を制御するわけだ。この方式の特徴は、電圧のループしか存在しないため、制御自体が比較的単純なことに加えて、オン時間を短くできることや、EMI耐性が高いことなどが挙げられる。しかし、一方で、位相補償回路が複雑になるという欠点を抱えている。位相補償回路は、電源ICユーザーが設計する必要がある。従って、ユーザーにとっては、使いにくい方式というわけだ。


図2 図2 電流モード制御方式

 電流モード制御方式は、電圧モード制御方式の改良型である。具体的には、電圧モード制御の制御ループで使う三角波を、電源回路自身のスイッチング電流(インダクタ電流)に置き換えた方式である(図2)。従って、電圧のループのほかに、電流のループを持つ。制御自体は比較的複雑になるが、位相補償回路の設計が大幅に簡単になる。このほか、フィードバック・ループの安定性が高いことや、入力電圧変動特性に優れること、スイッチング素子(パワー)MOSFETの過電流保護機能を原理的に備えていることなどのメリットも兼ね備えている。

高速応答特性に優れるリップル制御方式

図3 図3 電流モードを実際に適用した電源ICの内部ブロック図と外付け部品構成例

 しかし,電圧モード制御方式と電流モード制御方式はいずれも,負荷急変時の応答速度が比較的低いというデメリットがある。その理由は、エラー・アンプの周波数特性や,スイッチング動作の1周期分に相当する無駄時間遅れが存在すること,位相補償回路(LCフィルタ)の周波数特性によって応答速度が制限されるためである。

 一般的な用途ではあまり気にはならないレベルだが、動作状態が急激に変化するマイクロプロセッサなどの用途では深刻な問題である。ただし最近、テレビやBlu-ray Discレコーダーなどの民生機器に搭載するマイコンやDSP、FPGAなどでも、動作状態が急激に変化する品種が使われるようになっており、こうした民生機器でも応答速度の問題が顕在化しつつある。

 そこで現在、採用するスイッチング・レギュレータICが増えているのがリップル制御方式である。リップル制御方式とは、出力電圧を監視し、設定したしきい値を上回った(下回った)ことを検出したならば、それをトリガーとしてスイッチング素子のオン/オフを制御するというものだ。しきい値を下回ったことを検出する「ボトム検出、オン時間固定方式」や、しきい値を上回ったことを検出する「アッパー検出、オフ時間固定方式」などがある。なお、上側と下側に設定したしきい値のウインドウを利用する方式もある。これをヒステリシス制御方式と呼ぶ。

 リップル制御方式では、エラー・アンプを使わない。コンパレータで出力電圧と基準電圧を比較して,スイッチング素子のオン/オフを制御する。このため,エラー・アンプの周波数特性による遅れや,スイッチング動作の1周期分の無駄時間遅れが発生しない。応答速度は、出力部のLCフィルタで決まる。このため、非常に高い応答速度が得られるというメリットがある。

 ただし、コンパレータでのしきい値検出でスイッチング動作のタイミングを決めるため,スイッチング周波数が変動したり、大きなジッターが発生したりするデメリットがあるため注意が必要だ。

半導体メーカー各社が工夫

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 電源回路の制御モードには、前述のような3つの方式がある。しかし半導体メーカー各社は、独自の工夫を凝らすことで、それぞれの方式が抱えるデメリットを克服している。例えば、米ナショナル セミコンダクター社では、電流モード制御方式に改良を加えた「エミュレーテッド電流モード制御方式(ECM:Emulated Current Mode Control)」を開発している。この方式は、スイッチング電流(インダクタ電流)を実際に検出するのではなく、ダイオードに流れる電流を検出することで、スイッチング電流を見積もって帰還をかけるというものだ。実際のスイッチング電流で発生するスパイク状の雑音の影響を受けないため、ブランキング時間が不要になる。従って、一般的な電流モード制御方式が抱える「オン時間を短くできない」という課題を解決できるわけだ。この方式は、同社のスイッチング・レギュレータ制御IC「LM5119」「LM25119」などに採用されている。


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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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