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A-Dコンバータ

» 2011年03月11日 00時00分 公開
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A-Dコンバータ

 A-Dコンバータとは、アナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路のこと。電子機器のデジタル化に伴い、アナログ信号を入力とするものでは欠かせない回路となっている。具体的には、通信機器や計測機器、オーディオ/ビデオ機器、医療機器などの電子機器である。

 A-Dコンバータにはさまざまな特性があるが、その中で特に重要なのは、分解能と変換速度(サンプリング速度)である。分解能は、電圧振幅軸方向の変換時の細かさである。例えば、分解能が4ビットであれば16段階であり、基準電圧が5Vであれば量子化単位(LSB:Least Significant Bit)は約0.3Vになる。分解能が12ビットと高まると4096段階となり、基準電圧が5Vのときの量子化単位は約0.001V(1mV)。18ビットならば26万2144段階となり、基準電圧が5Vのときの量子化単位は約0.00002V(0.02mV)となる。従って、高分解能のA-Dコンバータほど、高精度な信号処理が求められることになる。

 もう一つの重要な特性である変換速度は、時間軸方向の変換時の細かさである。単位はサンプル/秒(SPS)で、1秒間に変換を何回行ったかを示す。例えば、1SPSは1秒間に1回、1MSPSは1秒回に100万回ということになる。なお、変換速度が小さすぎると、元のアナログ信号を再現できなくなってしまう。その境となるのが、アナログ信号の周波数であるfの1/2である。従って、変換速度はf/2よりも大きくしなければならない。これを標本化定理(ナイキストの定理)と呼ぶ。

実現方法によって長所短所がある

図1 図1 A-Dコンバータの実現方式の位置付け
横軸に分解能(ビット)、縦軸に変換速度(SPS)をとって、各実現方式をマッピングした。

 A-Dコンバータを実現する回路手法はいくつかある。代表的な手法としては、ΔΣ(デルタ・シグマ)方式(ΣΔ方式と呼ばれる場合もある)や逐次比較(SAR:Succesive Approximation Register)方式、パイプライン方式、フラッシュ方式が挙げられるだろう。

 この4つの回路方式は、それぞれ得手不得手がある(図1)。高い分解能で処理することが最も得意なのは、ΔΣ方式である。一般に12〜24ビットと高い分解能が得られる。次に、高い分解能が得られるのが逐次比較方式。10〜16ビットの分解能が得られる。その次はパイプライン方式で、分解能は8〜14ビット。そして最後がフラッシュ方式で、分解能は6〜12ビットである。

 一方、変換速度でみるとどうだろうか。最も高い変換速度が得られるのは、フラッシュ方式である。GSPSオーダーと極めて高い変換速度が得られる。次は、パイプライン方式である。数100MSPSの変換速度が得られる。この次は逐次比較方式で、実現できる変換速度は数百kSPSから数10MSPSである。得られる変換速度が最も低いのはΔΣ方式である。一般には数k〜数百kSPSオーダーである。ただし、最近では回路方式の工夫などにより数10MSPSと高い製品が手に入るようになっている。

 ここで注目して欲しいのは、高い分解能が得られる順番と、高い変換速度が得られる順番がまったく逆であることだ。例えば、ΔΣ方式を使えば、高い分解能は得られるが、変換速度は低くなってしまう。一方、フラッシュ方式を使えば、極めて高い変換速度は得られるが、低い分解能しか得られない。従って、設計中の電子機器の特性を良く見極めて、使用するA-Dコンバータを選ぶ必要があるだろう。

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 最近では、新しい回路方式を採用することで、高い変換速度を実現したA-Dコンバータも登場している。代表的なのが、米ナショナル セミコンダクター社の「ADC12D1800」である。分解能は12ビットで、変換速度は3.6Gビット/秒と高い。1.8GSPSで動作するパイプライン方式のA-Dコンバータを二つ用意し、それぞれをインタリーブ動作させることで3.6GSPSを実現した。


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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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