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ヒステリシス制御方式

» 2012年01月26日 00時00分 公開
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ヒステリシス制御方式

 ヒステリシス(hysteretic)制御方式とは、電源回路の制御方式の一つ。出力電圧を所望の値に安定化させるフィードバック・ループに用いる制御方式である。負荷急変に対する応答速度が極めて高いという特徴がある。つまり、FPGAやASIC、マイコン、DSPなどがフル稼働状態から待機状態、もしくは待機状態からフル稼働状態に移行して負荷電流が急変しても、出力電圧を大きく変動させることなく追従できるわけだ。従って、最新のデジタル・チップへの対応が可能である。なお、ヒステリシス制御のほかに、バンバン(Bang Bang)制御方式、リップル制御方式などの名前で呼ばれることもある。

エラー・アンプを使わずに応答速度を高める

 一般に、電源回路の制御方式としては、電流モード制御方式や電圧モード制御方式が使われることが多い。電圧モード制御方式は、出力電圧をエラー・アンプ(誤差増幅器)で基準電圧と比較し、その差に相当する電圧を三角波と比べてPWM信号のパルス幅を決め、出力電圧を制御する方式である。電流モード制御方式は、電圧モード制御方式で使う三角波を、適用する電源回路自身のスイッチング電流波形に置き換えた方式だ。

 この二つの制御方式は、幅広い出力電力の電子機器に対応できる。さらに、固定スイッチング周波数のPWM信号で動作するので設計が比較的容易というメリットを備える。しかし、負荷急変時の応答速度は低い。その理由は、フィードバック・ループ内に存在するエラー・アンプの周波数特性による遅れや、スイッチング動作の1周期分に相当する無駄時間遅れ、LCフィルタを含む位相補償回路の周波数特性による遅れなどが存在するからだ。応答速度を高めるには、スイッチング周波数を向上させるしかほかに方法はない。

 しかし、スイッチング周波数を高めると、エラー・アンプの消費電力が増大してしまう。さらに、スイッチング周波数の向上によってスイッチング損失が増えるため変換効率が大幅に低下したり、放射電磁雑音(EMI)が増えたりする。

 こうした問題を解決するのがヒステリシス制御方式である。この制御方式はエラー・アンプを使わない。その代わりに、コンパレータ(比較器)を使う。コンパレータで出力電圧と基準電圧を比較して、スイッチング素子のオン/オフのタイミングを制御する。このため、エラー・アンプの周波数特性による遅れや、スイッチング動作の1周期分の無駄時間遅れが存在しない。応答速度を決めるのは、LCフィルタのインダクタンス成分である。このためスイッチング周波数が低くても、非常に高い応答速度が得られる。

 しかし、ヒステリシス制御方式にも欠点がある(表1)。スイッチング周波数が変動することや、本質的にジッター成分が大きいことなどである。さらに、出力電圧のリップル成分を利用してコンパレータを駆動するため、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)が比較的大きい出力コンデンサが必要になるという欠点もある。

欠点を補う技術が登場

 ただし最近になって、こうした欠点を解決した制御方法が登場している。具体的には、コンスタント・オン・タイム(COT:Constant On Time)方式や、リップル注入方式などである。前者を使えば、スイッチング周波数の変動を極力抑えることが可能になり、EMI対策が簡単になる。後者を使えば、出力コンデンサにESRが小さい積層セラミック・コンデンサが使えるようになる。このため、電源回路の小型化が可能になるわけだ。

 この二つの改善方式を採用した電源制御ICの代表例としては、米テキサス・インスツルメンツ社の「LM3150」がある。入力電圧範囲が6?42Vと広いため、産業用電子機器や車載用電子機器などへの適用が可能である。

photo 表1 各電源制御方式のメリットとデメリット

テキサス・インスツルメンツの電源ICラインアップ


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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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