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オペアンプ

» 2011年02月24日 00時00分 公開
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オペアンプ

 オペアンプ(operational amplifier) とは、入力電圧を増幅して出力する機能を備えたアナログ回路のこと。日本語では演算増幅器と呼ばれる。

 入力は二つあり、一つが反転入力(−)、もう一つが非反転入力(+)である。出力信号を入力部に戻す負帰還回路を構成することで、希望する利得が得られる。電源電圧は、±12Vや±15Vなど、正負対称の二電源を用いるケースが多い。ただし、最近製品化されているオペアンプは、+5Vや+12Vなどの単電源で動作するものが多くなっている。

 オペアンプには、「理想オペアンプ」という概念が存在する。現実的には達成することは不可能だが、開発者はこの目標に一歩でも近付けるように日々努力しているわけだ。具体的には、増幅率が無限大、周波数帯域幅が直流(DC)から無限大まで、入力インピーダンスが無限大、出力インピーダンスがゼロ、雑音が存在しない、入力がゼロのときは出力もゼロという特性を満足するのが理想オペアンプである。

60年代に製品化が始まった

図1 図1 オペアンプICの使用例
非反転増幅器として使用した場合の接続例である。入力信号と出力信号の位相が変化しないため、非反転増幅器と呼ばれる。負帰還をかけることで、増幅率を希望する値に設定できる。具体的には、(1+R2/R1)倍となる。

 オペアンプICが世界で初めて製品化されたのは1960年代と古い。米フェアチャイルド・セミコンダクター社が製品化した「μA702」がそれだ。ただし、このオペアンプICは、入力インピーダンスが低く、開ループ利得も低いという問題を抱えていた。このため、あまり普及しなかった。その後、改良が進み、1965年には入力インピーダンスと開ループ利得を高めた「μA709」が登場。さらに1968年には、位相補償回路をIC内部に取り込むことで使い勝手を大幅に高めた「μA741」の製品化が始まった。これらの製品化がきっかけとなり、オペアンプICの普及が始まった。現在は、多くの半導体メーカーがオペアンプICを市場に投入している。


表1 表1 製造技術によるオペアンプICの違い
なお、表中の評価は一般的な場合であり、特殊な製品には当てはまらないケースがあるので注意してほしい。

 オペアンプICは、製造技術によって大きく三つに分類できる。バイポーラ品とBiCMOS(バイポーラCMOS)品、CMOS品である。それぞれ長所と短所がある。バイポーラ品の長所は、高速な点である。高周波信号の増幅が可能だ。さらに利得やスルー・レートといった特性にも優れている。ただし、消費電流が大きいことや、入力オフセット電圧が大きいことなどの短所がある。CMOS品の長所は、消費電力が低い上に、入力オフセット電圧や入力バイアス電流が低いことである。ただし、高速動作には適さない。BiCMOS品は、バイポーラ品とCMOS品の中間に相当する特性が得られる。バイポーラの良い所とCMOSの良い所を兼ね備えた性能を実現できる特長がある。

低速用途と高速用途で注意点は違う

 オペアンプを選択する際に注意すべき特性は、入力するアナログ信号の周波数が数十MHz以下の低速領域と、数十MHz以上の高速領域とでは異なる。

 低速領域では、DC特性に注意を払う必要がある。精度に大きな影響を与えるからだ。DC特性の中でも特に重要なのは、入力オフセット電圧と入力バイアス電流である。入力オフセット電圧とは、入力のアナログ信号に含まれるDC成分である。この値が大きいと、DC成分もオペアンプで増幅されてしまい、出力信号のグラウンド・レベルが大きく変動してしまう。つまり、出力信号の精度が大きく低下してしまう。

 入力バイアス電流も、これも増幅した信号の精度にかかわる特性である。入力バイアス電流とは、入力端子に流れ込む電流、もしくは入力端子から流出する電流である。通常、入力端子には抵抗が接続されており、ここに電流が流れると電圧降下が発生する。この電圧降下分がオペアンプによって増幅されると、入力オフセット電圧と同様にDC成分が変動し、出力信号の精度が低下してしまう。

 一方、高速領域では、交流(AC)特性への注意が不可欠になる。具体的には、利得帯域幅積(GB積)やスルー・レート、入力換算雑音電圧、高調波歪み(THD)などである。GB積は、利得が1のときの周波数帯域幅のことだ。従って、入力アナログ信号の周波数よりも、十分に広い帯域幅を備えたオペアンプICを使う必要がある。さもなければ、入力アナログ信号を高精度で増幅することができなくなる。

 スルー・レートは、入力アナログ信号の変化に対してどの程度のスピードで追従できるかを表す特性である。単位はV/μs。入力が高周波信号の場合は、高いスルー・レートを備えたオペアンプICを採用しなければならない。


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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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